肉色マジック
「リトルー、ちょっと来てー!」
紅魔館にある巨大な図書館―――
その責任者であり紅魔館館主の親友でもあるパチュリーは今日、ある魔法を完成させた。
早く試してみたいのか、早速パチュリーの助手として、小間使いとして図書館で働いている
小悪魔を呼びつけた。
「なんでしょうか、パチュリー様」
「フフ…ようやく魔理沙を我が手中にする魔法を完成させたのよ」
「…また媚薬系ですか、それで私に実験台になれというんですね、わかりまし…」
「はいソコ、早とちりしない!」
またか…と思い諦め口調で開き直る小悪魔を制止するパチュリー。
いつも小悪魔はパチュリーが魔法薬等を作ると真っ先に実験台にされる。
まるで兄にテレビで覚えたプロレス技をかけられる弟のように。
今回もそうだと思っていたが違うようだった。
「この魔法は自分にかけなきゃ意味ないからね、本番前に成功するか見て欲しいだけよ」
「はあ…魔理沙さんをゲットする為に自分にかける魔法ですか…フェロモン系かな…?」
「フフフ…似たようなモノよ…行くわよ、筋(金)符『ステロイド』!」
「…え?うわあっ!」
金の属性を改造、というかもじっただけの符を使ったスペルを宣言すると
たちまちパチュリーの身体は背が伸び骨格が大きくなり白かった肌も褐色になる。
なにより凄いのは全身を覆う筋肉だ、特に丸太のような腕は殴られれば首から上が飛んでいきそうな太さだ。
その風貌はまるでサンフラ○シスコ・ジャイ○ンツのバ○ー・ボ○ズのようだった。
「…っちょっと筋肥大しすぎたわね、これじゃスピードが殺されるわ…少し修正しなきゃね」
「あの、パチュリー様…これは一体…」
「お、この本いいな。持ってくぜ」
「チッもう来てたみたいね…ひとまず元に戻るわ」プシュゥゥゥン…
魔理沙は既に図書館に来ていたみたいだ、だが魔道書漁りに夢中で
パチュリー達の様子には気付いていないみたいだった。
唖然とする小悪魔を尻目に元の大きさに戻ったパチュリーは含み笑いをしながら魔理沙を呼んだ。
「魔理沙ぁ!」
「あー、なんだ?」
「もう、また勝手に入って…しかもその手に持ってるのは一昨日私が書き上げた魔道書だし」
「もってくぜ♪」
「…いいわよ」
「…へ?」
「持ってっていいって言ってるのよ…条件はあるけどね」
「な、なんだ!?いつもと様子が違うぜパチュリー…」
途中まではいつもの会話だった、だがしかし…
口元を緩めながら怪しさ満載のパチュリーの言葉に魔理沙は警戒し一歩後ずさった。
「…私の気持ちには気付いてたんでしょ、魔理沙」
「さ、さあ…なんのことだ?」
「私が病弱だから…健康的じゃないから振り向いてくれなかったのよね…」
「…は?…何言ってるんだパチュリー…?」
魔理沙の反応に関係なくパチュリーは呪文の詠唱をはじめる。
BGMが流れ出す。図書館でパチュリーと弾幕ごっこをする時の曲に似ていたが
少しメタルっぽいアレンジだ。
―BGM♪マッスルガール〜少女筋肉質―
「もう…もやしとは言わせないわっ!筋(金)符『マーキュリー・フレディ』!」
「ウィ〜アァザチャンピオ〜ン♪とかってやつか?って………えっ…えぇ!?」
ボコンッバコッ!
ムクムクムク…ムキィィィンッ!
どこかの故人を思わせるような名前のスペルを宣言するとたちまちパチュリーの身体は大きくなり
漢らしい8頭身で身長は2メートルくらいに伸び、腕、胸、腹、太ももははちきれんばかりの
筋肉で覆われた。
「私の上腕二等筋が光って唸る!魔理沙を掴めと轟き叫ぶ!喰らえっ筋肉と筋肉と筋肉をぉっ!」
「…筋肉ばっかかよ、って突っ込んでる場合じゃない!」
「…準備完了よ魔理沙…キャオラッ!」
ベキィッ!ドシーンッ…
パチュリーは奇声を張り上げ裏拳をかまし横にある本棚を一撃でふっ飛ばして見せた。
それを見た魔理沙は脳内警戒信号がMAXレベルを振り切りながらも強がってみせた。
「ヤレヤレ凄いなパチュリー…だが霧雨家には代々伝わったかどうか知らないが戦いの発想法があってな」
「…行くわよ魔理沙!」
「それは…逃げるっ!バイナラだぜパチュリー!」ズダダダッ
肌が汗で光り血管を浮き出たせ筋肉を強調するような
ボディビルダーがやるパフォーマンスを見せ付けるパチュリーを見るなり魔理沙は逃げ出した。
しかし体調が絶好調で全身筋肉と化したパチュリーがそのまま逃がす訳は無かった。
「逃がしはせんっ逃がしはせんぞぉっ!」ズゴゴゴゴゴッ!
「なにィ!?凄いスピードで追って来る!」
「フフフッ!通常の三倍のスピードよ!」
「くそっ当たらなければどうということはないぜ!」
「全力で認めさせてあげるわっ!若さ故の過ちというやつをねっ!」
「やっべ、近づいてくる!…しかし、まだだっ!まだ終わらんぜっ!ブレイジングスター!」
どこかの機動戦士に乗るパイロットのような台詞を吐きながら追いかけっこする二人。
必死に逃げる魔理沙の前にどこからともなく新たな魔法使いが現れた。
「お困りのようね、魔理沙」
「…?おお、アリス!助けてくれ!」
「…あなたを全力で救ってあげるわ…肉呪『鋼体のアーノルド・シュワルツェネッガー人形』!」
突然現れたと思ったらアリスはスペル宣言をした。
すると途端に人形とアリスが同化しボディビル出身のアクション映画俳優のような肉体になった。
―BGM♪〜魔法少女達の筋肉祭―
「おわあっ!お前までムキムキマッチョにぃっ!?」
「…魔理沙、あなたを美しき筋肉の世界に救ってあげるわ♪」
「は、謀ったなアリス!?」
「あなたはいい友人だったけどあなたの浮気癖がいけないのよ、私にパチュリーに霊夢に悪魔の妹に…」
ズシーンッ…ズシーンッ…
「ひぃっ!」
眼前で喋るアリスに気をとられている内に後ろに恐ろしい気配を感じた。
どうやらパチュリーが追いついたようだ…
前門の筋肉アリス、後門のマッスルパチュリーに囲まれ
ともすれば圧死しそうな迫力の二人に迫られる魔理沙。
「「ゼロ距離…取ったわっ!!」」
「ひぃぃ…やだ、やだぁ…」
「さあ魔理沙、この逞しい腕に抱かれなさい!」ムキッ
「いやいや魔理沙、この見事な大胸筋に抱きつきなさい!」ムキキッ
「嫌だぁぁぁぁ!!!!!」
ガバッ!
「ハアッハァッ…夢か」
大量の汗をかきながら魔理沙は飛び起きた。
ここは香霖堂、ただくつろぎに来ただけだったがストーブが暖かく心地いいため
つい居眠りをしていたようだ。
「ん、起きたのか魔理沙。まったく、人の店で爆睡するなんて…ほらタオルだ、口を拭え」
「あ、あぁ…済まない、香霖…」
魔理沙が目覚めの悪いままよだれを拭いていると
突然香霖は服を脱ぎだし魔理沙の方へ振り向いた。
「ところで僕は最近ボディビルを始めたんだ、この割れた腹筋を見てくれ、コイツをどう思う?」ムキッ
「ぎゃああああっ!死ねぇぇファイナルスパークゥゥゥ!!!」ズキュウゥゥゥン!
「なっ何故だぁぁぁああああ!!!」
糸冬
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後書き
勢いだけで突っ走りました、色々な意味で申し訳ありません(;´∀`)ゞ
久々に短いの、しかも健全(?)ネタ書いたなぁ。
それではまた。